2018年01月25日

時をかける列島 第六章

 時をかける列島
しゅわるべ


 第六章
 さて、海上自衛隊と大日本帝国海軍の連合艦隊はガダルカナル島西端沖にて補足した米海軍の大艦隊を追って東進していた。
「我々に任せろといったものの、戦艦や空母を仕留められますかね。こっちの対艦ミサイルは現代艦を攻撃することを前提にしていますから、戦艦ほどの装甲を貫けないのでは」とさがみの副長である古代が双眼鏡を片手に言った。
「とどめは第三艦隊にやってもらうのもありだろう。こちらは沈めるというよりは、向こうが作戦行動に移れない状態にすることに努める。どんな重装甲な戦艦でも射程外から未知の誘導弾が飛んでくるような状況に対処するのは難しいだろうからな」と艦長の村上が答えた。
「ひとまず、一二〇キロくらいまで詰めたら対艦ミサイルを発射する。そのころには敵の空母艦載機に見つかるだろうからこちらに爆弾や魚雷満載でやってくるはずだ。それに備えて、対空戦闘も用意しておけ」と村上。
「こちらの艦載機は出しますか。航空隊の皆、一番槍は自分たちでと言っているみたいですよ」と古代。
「そうだな。今のうちに出しておいて一次攻撃と同時に攻撃させるとするか。航空隊は出撃せよ」と村上。
 その号令とともにさがみは単艦で回頭を始める。艦載機を出撃させるには風に乗るような向きにいるに越したことがないからである。その後、三十機のF―35C戦闘機がさがみ前方のスキージャンプ式滑走路から出撃していった。全機ASM―3を四発ずつ積んでいる。最新式の対艦ミサイルで、マッハ3で飛翔する。本来は、陸上機のF―2に乗せる前提のミサイルで、内部のウェポンベイに搭載できないのでF―35Cに載せるのはステルス性の観点から本来はよろしくないのだが、今の敵は八十年前の軍隊なので、海自はステルスよりも飛翔距離を取ることとしたのだ。
 そして、すべての艦載機が出撃したところでさがみはその海域で直衛艦二隻と第三艦隊の瑞鶴、翔鶴、そしてその直衛艦とともに待機することとなった。貴重な航空護衛艦を前線に出すわけにはいかないからだ。
「こういう時、前線に立てないから航空護衛艦の艦長はみんな歯がゆく感じるものだなあ」と村上がぼやく。
「アドミラルクズネツォフ級でも買っていたら前線に出られたかもしれませんがねえ。まあ、こちらは後方で指揮に徹していましょう。一応、こちらの防空は瑞鶴と翔鶴の艦載機がやってくれることですし前線と航空隊の指揮に専念できます」と古代。
「ああ、そうだな。おっと、どうやら前のほうは距離を詰められたようだぞ。そして、見つかったらしい」と村上。
 そのころ、米軍艦隊も連合艦隊に気づいていた。
「おい、偵察機がジャップどもの艦隊をとらえたぞ。しかも、戦艦中心の打撃艦隊といったところだ。折角のクリスマスだ。ファッキンジャップに魚雷のプレゼントをデリバリーしてやれ」と上機嫌でハルゼーは航空隊の出撃を命じた。それは、直掩機を残し全てを向かわせる大胆な命令であった。これで相手が普通の艦隊であったらおそらくこれはうまくいったかもしれない。しかし、この判断が命取りであったことがその十分程後に気づくこととなる。
「くそ、いくらクリスマスだからって気が抜けているぞ。遅い、これではジャップに先手を取られるぞ」とちょうどハルゼーがまたキレかけているときであった。
 突如、空を切り裂かんばかりの音とともに小さな飛行体がいくつか米艦隊の方向にものすごい速度で近づいていた。そう、海自の護衛艦が放った対艦ミサイルである。SSM―1Bのため速度は亜音速といったところではあるが、ジェットエンジンがやっと開発段階に入ったという時代である。そのようなものを見たものはほとんどいなかったため皆もはや反応ができなかった。
 そして、対艦ミサイルたちはそれぞれの目的に近づくとその直前に跳ね上がり上から刺さるように各々の艦に突っ込んでいった。その後、四隻の戦艦に関しては貫通を免れたが、他の空母や巡洋艦、駆逐艦では天板を貫通したのちに爆発が起きた。
 せいぜい二六〇キロほどの榴弾であるので、駆逐艦であっても一気に轟沈とはいかないが大炎上し戦闘継続は不可能な状態となっていた。
 さらに、ハルゼーの乗るエンタープライズでは飛行甲板のど真ん中に直撃、しかもそこには連合艦隊を叩かんと艦攻や艦爆が多数の魚雷や爆弾を搭載しているところであったので、当然ドッカンバッカンと大騒ぎになっていた。
 ハルゼーは茫然とし、「これは何が起きたというのか。俺は悪夢でも見ているのか」とつぶやいた。しかし、これだけではおさまらなかった。さがみの飛行隊が放ったASM―3が戦艦と空母に向かいマッハ3で突っ込んできたのだ。音速を超えた飛翔体など砲弾以外にないようなこの時代。直撃し爆発してから轟音が聞こえるという奇妙な兵器に恐怖を覚えても致し方なかった。
 もはや、エンタープライズは限界であった。ハルゼーは総員退艦を命じ旗艦を二回に及ぶミサイル攻撃を食らっても比較的損傷の少なかった戦艦サウスダコタに移乗した。その直後、エンタープライズともう一つの空母サラトガは火薬庫に引火ししめやかに轟沈した。
 こうして、米海軍は航空戦力を完全に失い随伴艦もどれも中破から大破の状態。頼みの戦艦も損傷があるいわゆるピンチに陥ったが、さらに戦果を拡大せんとする帝国海軍第三艦隊が徐々に近づいていることに誰も気づいていなかった。(続)
posted by 新月 朔 at 15:10| Comment(0) | 時をかける列島 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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